コラム

ウイスキー樽の種類・サイズ|材質で変わる風味や特徴

保存版|ウイスキーの香りはどこで生まれるの?製法工程で与えられる香味を種類別に徹底解説【フルーティになる理由、由来は?】この記事ではウイスキーの香りの由来を製造工程別に解説しています。最後まで読み進めると 「このウイスキーは口当たりが軽いな…蒸留器が...

ウイスキー樽|主な木材・特徴

ウイスキーの樽に使われている木材は主に2種類。アメリカンホワイトオークヨーロピアンオークです。

アメリカンホワイトオークはバーボン樽に使用される事が多く、ウイスキーの熟成用として使用される樽の90%はこのアメリカンホワイトオークだと言われています。

ヨーロピアンオークはシェリー樽に使われる事が多い木材です。ウイスキーを熟成すると深みのある香味を産む魅力的な木材ですが、高級で数も少ない事が難点です。

他にフレンチオーク(セシルオーク)やジャパニーズオーク(ミズナラ)が使用される場合もあります。主な特徴は下をご覧ください。

アメリカンホワイトオーク バーボン樽に多い。90%はこの素材。
※別名:アルバオーク
ヨーロピアンオーク シェリー樽に多い。成長に時間が必要。高級。
※別名:スパニッシュオーク
フレンチオーク コニャック樽に多い。大変高級。
※セシルオーク
ジャパニーズオーク 高級。
※ミズナラ樽

 

スパニッシュオークの特徴

香味の特徴は以下の表をご覧ください。

アメリカンホワイトオーク バニリン
→バニラ、ハチミツ、ココナッツ、キャラメル
エステル香
→バナナ、リンゴ、洋梨
ヨーロピアンオーク タンニン
→ドライフルーツ、松脂、クローブ
フレンチオーク 中間
→スパイシー、バニラ
ジャパニーズオーク オリエンタル
→伽羅、白檀、キャラメル、ココナッツ

バーボン樽やシェリー樽の特徴

ウイスキーに与える香味は、熟成用の樽に元々どんな液体が詰まっていたかによっても異なります。

バーボンが詰まっていた熟成樽からは強いバニラ香が、シェリーが詰まっていた樽からはドライフルーツやスパイスの香りが与えられます。

バーボン樽 強いバニラ、カラメル、セメダイン
シェリー樽 ドライフルーツ、松脂、クローブ

 

一口にシェリーと言ってもその種類は様々です。どの種類のシェリーが詰まっていたかでウイスキーの味わいは変化します。

マンサニージャ 辛口・淡
→果実味、スッキリ、潮
フィノシェリー 辛口・淡
→スパイス、ウッディ、果実味
アモンティリャード 辛口・並
→ナッツ、若々しい酸味、ドライ
オロロソ 辛口・濃
→ナッツ、熟したカシス、プルーン
モスカテル 極甘口・極濃
→完熟カシス、プルーン、レーズン、果実の酸味
ペドロヒメネス 極甘口・極濃
→カシス、プルーン、レーズン、シロップ

・シーズニング樽について・

シェリー樽枯渇に対応するために生まれたシーズニング製法で作られた樽。中古のシェリー樽を買い付けるのではなく、新樽にシェリーを2〜3年詰めてシーズニング(味付け)したものを利用するのが特徴。従来のシェリー樽より軽快な味わいになると言われている。

 

また、シェリーとは別の酒精強化ワインが詰まっていた樽がウイスキーの熟成に使われる事もあります。主な種類と香味傾向は下の表をご覧ください。

ポート ドライフルーツ、スパイス
ルビー・ポート イチゴ、カシス
マデイラ 甘味、ドライ、軽い果実味、スパイス
マルサラ スパイス、複雑
※甘口傾向
ミュスカ 非常に強い甘味、レーズン、カシス

ウイスキー樽|サイズ

スコッチウイスキーの熟成に使用される樽はホグスヘッド(230-250Lの樽)が中心です。バーボンウイスキーは一回り小さいバレル(180-200L)が利用されます。

樽のサイズは小さいほど熟成が速く進みます。樽の影響も強く受けダイナミックな味わいになると言われています。(原酒の接触面積が多いため)
反面、大きな樽は優しく上品な風味を持つと言われています。

▼サイズ▼ ▼容量(リットル)▼
バレル 180〜200
ホグスヘッド 230〜250
バット 480〜500
パンチョン 480〜520
ポートパイプ 650

ウイスキー樽の再利用

ウイスキーの樽は中古の樽が使われます。中古の樽に初めてスコッチウイスキーの原酒を詰める際の樽はファーストフィルと呼ばれます。ファーストフィルは樽から抽出される成分が最も多い段階です。

ウイスキーの原酒を詰め替えるたびにセカンドフィルサードフィルと数字が増えて行きます。その度に樽由来の香味は薄まり、原酒の味わいがより際立つ仕上がりになります。

フォースフィル以上使われることは少なく、樽の寿命は100年ほどと言われています。

ウイスキー樽|まとめ

いかがでしたでしょうか。
一旦ここで切らせて頂きます。

念のためワイン樽やラム樽など、少し珍しい樽の特徴についても書かせて頂きました。更に知識を深めたい方は以下をご覧ください。

ワイン樽の特徴

ワイン樽は原酒の未成熟感を解消しまろやかに変化させると言われています。色々な木材が使用されていますが、ウイスキーに使われるワイン樽はヨーロピアンオークやフレンチオークが中心です。

赤ワイン樽を使用した場合は原酒に力強さと果実味が与えられます。産地別の特徴は以下をご覧ください。

ボルドー
→重厚、赤い果実
ブルゴーニュ
→果実味、控えめな甘さ、
バローロ タンニン、ドライフルーツ、重厚
アマローネ 重厚、ドライ、レーズン

白ワイン樽を使用した場合、味わいは軽やかで上品な甘さが与えられます。種類別特徴は以下をご覧ください。

ソーテルヌ 甘味、軽やかな果実、柑橘
ミュスカデ
→フローラル、柑橘、桃
シャルドネ
→黄色いフルーツ、酸味、ドライ

コニャック樽の特徴

主にフレンチオーク(セシルオーク)で作られた樽が使用されています。リッチで複雑な味わいがウイスキーに与えられます。

コニャック リッチで濃厚、熟したレーズン、ウッディなスパイス

ラム樽の特徴

木材はアメリカンオーク、ヨーロピアンオークが主流ですが、その他の木材が使用される事も珍しくありません。バーボン樽と比べて複雑で上品な甘味を生む傾向にあります。

ホワイトラム 甘口、蜂蜜、バニラ、トロピカルフルーツ、アーモンド
ダークラム 甘口、シロップ、黒い果実、オークの香り、カラメル、バニラ

ビール樽の特徴

ビール樽の歴史は浅く、原酒への影響はまだまだ研究途上です。木材はアメリカンオークを中心に様々な樽が使用されています。

ビール樽 チョコレート、コーヒー、香ばしい麦、シトラス、りんごなど

豆知識|マリッジとフィニッシュの違い

2010年頃から盛んに聞かれるようになった「〜フィニッシュ」という言葉。似た意味を持つ言葉に「マリッジ」があります。この2つの違いは原酒をブレンドするタイミングにあります。

マリッジ製法は熟成させた原酒をブレンドしてから後熟用の樽に移し、熟成します。
対してフィニッシュ製法は熟成させた原酒をブレンドする前に追熟用の樽に移し替え、個別に熟成させる製法です。

マリッジ 熟成させた原酒をブレンドしてから後熟用の樽に移し、再度熟成します
フィニッシュ 熟成した原酒をブレンド前に追熟用の樽に移し替え、再度熟成します。その後のブレンドの有無は問いません。

※マリッジは「後熟」、フィニッシュは「追熟」と訳されます。

 

グレンフィディック蒸溜所のマリーイングタン

マリッジ製法は一度に大量の製品を確保できる効率的な製法ですが、ブレンド時の味作りや樽の選定を間違えると全てを失ってしまう、非常にデリケートな製法でもあります。

多くの場合マリッジに使用される樽(マリーイングタン)の材質はステンレスかオーク材です。オーク材の場合は香味成分が抜けきったものが使用されます。
そしてマリーイングタンにはカスクストレングスのまま混和されるのが一般的です。加水を行う場合は成分の重層化(アルコール度数の不均一)を防ぐ為に樽内に循環機構を採用するなど、ムラを防ぐアプローチが必要です。

この失敗の許されない製法には高度な技量と正しい判断が求められます。今日もブレンダーたちはスキルを磨き続けています。

マリッジ製法を行なっている主な製品 ホワイト&マッカイ、グレンフィディック、シーバスリーガル12年ミズナラ、ウシュクベ・リザーヴ
フィニッシュ製法を行っている主な製品 グレンモーレンジィをはじめ、様々な蒸溜所がこの製法を取り入れています

 

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Ichiro
ウイスキーエキスパートのバーテンダーです。アイラ沼からやって来ました。得意技はタックルに合わせたフロントチョーク。苦手な技は足関節。人に助けられて生きてます。