お酒に慣れることは出来るのか。
その答えはイエスです。大多数の方がお酒に「慣れる」事は出来るでしょう。
しかしこれだけは伝えさせて下さい。
お酒に「慣れる」事と「強くなる」事は違うんです。
一体どういう事なの?
その疑問、紐解きましょう!
まず「酔い」とは何かからお話しさせて頂きます。
本当は怖い「酒慣れ」|「酔い」とは
そもそも酔いとはなんなんでしょう。ビールを飲んだら気持ちよくなる。その認識ではダメなんでしょうか。
現実は少しややこしかったようで。酔いとは
アルコールが脳のゲート(GIRKチャネル)をこじ開け、神経刺激の伝達を担うカリウムイオンが外向きに流れ、その神経細胞の働きが抑制される事で起こる現象
と言われています。何を言っているかさっぱり分かりません。
とにかく脳にアルコールが運ばれ、脳が麻痺すると「酔った」と言われる状態になるとのことです。分かりました。それ以上は聞きません。
・酔いとは?・
脳にアルコールが運ばれ、脳が麻痺した状態
本当は怖い「酒慣れ」|酔いの代謝・プロセス
酔いの定義は分かりました。つまりアルコールが脳に運ばれなければ酔わないという事です。
しかしまだ分からない事だらけです。
アルコールはいつ脳に運ばれるのか。
アルコールが脳に運ばれなくなるのはどの段階か。
それは以下をご覧下さい。肝臓の頑張りが伝わると思います。
摂取
アルコールを体内に摂取します。
▼
吸収
胃や腸からアルコールを吸収します。約20%は胃から吸収されると言われています。
※残りは小腸で吸収されます
▼
拡散
吸収されたアルコールが血流に乗り全身へ拡散します。アルコールが脳に到達するのはこの時です。
▼
代謝:1stステップ
肝臓に辿り着いたアルコールが代謝されます。
このとき働くのがADH(アルコール分解酵素)。アルコールはアセトアルデヒドに分解されます。
※アセトアルデヒドは赤ら顔、吐き気や頭痛の元になる物質と言われています。
肝臓で分解しきれなかったアルコールは再び血流に乗り、全身を巡ったのち再度肝臓に辿り着きます。これが酔いが続く原因となります。
▼
代謝:2ndステップ
肝臓でアセトアルデヒドが酢酸に分解されます。このとき働くのがALDH(アルデヒド脱水素酵素)です。
これにより晴れてアルコールの無害化が達成されます。肝臓様お疲れ様でした。
▼
排出
酢酸が血流に乗り全身に流れます。辿り着いた先で水と炭酸ガスに分解され、体外へ排出されます。
※アルコールの10%は分解されないまま汗や尿、呼気として体外へ排出されます。
アルコールを分解する流れはご理解いただけましたでしょうか。
聞き慣れない単語も多いと思います。
今回大切なのは以下の3点。
・ADH(アルコール分解酵素)
・アセトアルデヒド
・ALDH(アルデヒド脱水素酵素)
まずALDHについて説明します。次の項目をご覧ください。
本当は怖い「酒慣れ」|お酒に強い人は何故強い?
アルコールはアセトアルデヒドに分解される事が分かりました。
このアセトアルデヒドは体をチクチク痛めつける有害物質です。二日酔いの原因となり、癌を引き起こす要因でもあります。
このアセトアルデヒドを無害化してくれるのが、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)です。ALDHはアセトアルデヒドを酢酸に分解してくれます。
これにより、晴れて無害化。
二日酔いの心配が無くなる(?)という訳です。
有害物質であるアセトアルデヒドを分解してくれる重要な酵素、ALDH。
大変頼もしい存在ですが、この酵素の働きの強さは遺伝子により異なると言われています。
遺伝子により異なる…つまりそれはお酒の強さは生まれた瞬間に決まっているという事です。
これがお酒に強くなる事ができない理由になります。
※お酒に慣れる事ができる理由については後述します
なお、遺伝子の組み合わせには3種類あると言われています。
・Glu/Glu型
・Glu/Lys型
・Lys/Lys型
※Gluはグルタミン酸、Lysはリジンを表します(上記「+」内参照)
それぞれの型の特徴は以下をご覧ください。
01
Glu/Glu型
最強です。悪酔いをしにくいと言われています。
02
Glu/Lys型
お酒に「慣れる」事が出来るタイプです。
このタイプの方は慣れゆえにアセトアルデヒドが血液中に溜まりやすいと言われています。
※詳細は後述します
03
Lys/Lys型
最弱です。少量で悪酔いします。
しかし、その弱さが身を守ります。アルコールの摂取量が少なければ生産されるアセトアルデヒドの量も少なくなるのですから…
※自身が何型かはアルコールパッチテストや飲酒時の体調などでご確認下さい。すぐ赤裸顔になるのはLys/Lys型の特徴です。Glu/Glu型は約5割、Glu/Lys型は約4割、Lys/Lys型は約1割と言われています。「昔は弱かったけど今は慣れた」という方はGlu/Lys型の可能性が高いと言われています
本当は怖い「酒慣れ」|お酒に慣れるのは何故?
お酒の強さが生まれつき決まっているのなら、何故「慣れ」が発生するのでしょう。それはアルコール分解の助けとなる酵素の存在が理由と言われています。
▶︎助っ人の登場
アルコールをアセトアルデヒドに分解する主役は「代謝:1st」で挙げたADH(アルコール脱水素酵素)です。アルコールの70〜80%を分解します。
しかし、アルコールの量が多すぎてADHのキャパを超える事もあります。
そんな時に頼りになるのが助っ人です。
・MEOS(ミクロソーム・エタノール酸化系)
・チトクロームP450スーパーファミリー
彼らの力を借り、ADH達は三位一体となってアルコールを分解、解毒します。
チトクローム〜は有害物質を活性化してしまう事もあるようですが深く気にしないでおきましょう。
仲間に恵まれたADH。
力を合わせて敵(アルコール)を分解するその姿は映画「サマーウォーズ」のラストのよう。胸が熱くなりますね!
お酒を飲めば飲むほど助っ人酵素の働きは強くなり、アルコール分解速度はどんどん早くなっていきます。逆境を経験するほど強くなる仲間を持ったADH。まるで漫画のキャラクターのようです。
・お酒に慣れる仕組み・
助っ人が助けてくれる為
お酒に慣れてもアセトアルデヒドには慣れない
自身の強さが微妙でも助っ人が強くなる事でお酒に慣れる事ができるという事が分かりました。
しかし助っ人の力を借りてお酒に慣れたとしても、本当にお酒に強くなったと言えるかは疑問です。
何故なら助っ人達はアセトアルデヒドの分解にはノータッチ。
アルコールは分解するものの出たゴミ(有害物質)は放置してるんです。
こういった理由から、出たゴミが体内に溜まりがちなのがGlu/Lys型。
慣れたと思って遺伝子に刻まれたキャパ以上に飲んでしまうんです。有害物質をどんどん溜め込んでいるとは知らずに…
溜め込んだゴミのおかげでGlu/Lys型はがんにかかる可能性がGlu/Glu型の20倍以上にも跳ね上がっているとか。勘弁して下さい。
※全く飲酒をしない人と比べると95.4倍。絶望です。
Glu/Lys型を代表して言わせていただきます。
本当に勘弁して下さい。
いつかアルデヒドを分解してくれるサプリが販売されることを祈っています。
・お酒に慣れるのが怖い理由・
アルコールに慣れても
有害物質には慣れていない為
飲酒量は自分の体質を見極めて
さて
適正飲酒量は遺伝で決まる
酔わずとも体は傷つく
という知りたく無かった現実を知った訳ですが如何でしょうか。
Glu/Glu型だから関係ない?
嫉妬で寿命が縮まるのでやめてください。
※Glu/Glu型の方はアセトアルデヒドを分解するALDHの働きも強いと言われています。本当嫉妬しかありません。
私はこの事実を忘れる為お酒を浴びるほど飲んで寝ようと思います。皆様はご自身の体質を見極めて、お酒と良いお付き合いをされて下さいね。
それでは本日もありがとうございました!
関連記事
ハイチオールCにアセトアルデヒドの分解を促進する効果が認められたそうです。宜しければ下の記事もご覧下さい。