皆様はオールドボトルと言う言葉をご存知でしょうか。
一般的には昭和の時代、1989年以前に流通していたボトルを指す言葉(※)で、その味わいは現代のものとは全く違うと言われています。
※明確な定義はありません
それは原料や製法が違う為。そして経年によるアルコールの揮発やオフフレーバーの発生も理由となります。
特に後者の影響力は非常に強く、その度合いにオールドボトル愛好家は一喜一憂する事となるのですが、その話はまた別の機会にいたします。
現代のウイスキーとは全く違う味わいを持つオールドボトル。
しかし、実際にはどの程度違うのでしょうか。
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という事で、用意しました。
\ドン/
用意したのはジョニーウォーカー・ブラックラベルのオールドボトル。最古のボトルは1970年代に流通していたものになります。
半世紀前のジョニ黒は一体どのような味わいに仕上がっているでしょう。楽しみでなりません。
それでは今回もよろしくお願いします。
まずは概要からご覧ください。
ジョニ黒オールドボトル|特徴
ジョニーウォーカーは世界で最も売れているスコッチウイスキーです。1945年以来、50年以上に渡り販売量No.1の座を守り続けています。
キーモルトはカリラ、カードゥ、ラガヴーリン。タリスカーも有名です。流通年が古いほどラガヴーリンの味わいが感じやすくなると言われています。
元々は同族経営の企業でしたが1925年にDCLの傘下に入り、1986年にギネス社に買収され、1997年にはグランドメトロポリタン社と合併しディアジオ社となります。これらの時期に味が変わっていたとしてもおかしくはありません。
詳細は以下の記事をご覧ください
今回紹介するジョニ黒は「ブレンディングの教科書」と評価されるほどバランスの良いウイスキー。
バランタインやカティサークなどと比べるとしっかり濃厚でスモーキーな酒質が特徴で、かつて日本では今の100倍以上の値段(※)で取引されていた事もあるボトルです。
※現代の物価換算にて計算
ジョニ黒オールドボトル|ラベル・デザイン
今回用意したジョニ黒は4種類。左から1970年代流通、1980年代流通、1990年代流通、2000年代流通です。
並べると、ラベルのデザインやボトルの形状がそれぞれ異なる事が分かります。
1970年代のボトルはこちら。Black Labelの文字が小さいのが特徴です。違いは他にもありますが、ここでは簡単に説明させて頂きます。(詳細は別記事での説明を予定しています)
こちらは1980年代に流通していたラベルです。Old Scotch Whiskyの文字が大きいのが特徴です。カリグラフィ調の書体もポイントです。
この80年代は文字の圧が特別強い。何かあったのでしょうか。時代かな。
こちらは1990年代流通ボトルのラベル。かなりシンプルになりました。Old Scotsh Whiskyが筆記体になっています。
画面に余白が生まれ、文字のサイズに大小が付き、メリハリが感じられるようになりました。
こちらが2000年代流通ボトルです。ラベルにストライディングマンが現れました。
ブランド名JOHNNIE WALKERの書体はサンセリフ体になっていて、筆記体だったOld Scotch Whiskyの書体は細くなり可読性が増しました。
キャップの色も違います。70年代は白、80年代は白黒、90年代以降は黒色です。
ボトルシェイプは昔のものほどぽってりした印象です。近代になるにつれ鋭角に、シャープになっています。肩〜ネック部分を見てもらえると分かりやすいと思います。
ちなみに60年代に流通していたボトルはこちら。
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現在のようなスクリューキャップではなく、ワインのようにコルクで栓をされているのが特徴です。(上の画像で使用されているコルクは差し替えられたものです)
ジョニ黒オールドボトル|テイスティング
70年代の色味はかなり濃いです。近代のものほど明るいイエローになっています。(この画像では分かりにくいですが…)
また、今回テイスティングするのはオールドボトルです。個体差が大きい商品である事をご理解下さい。
前置きはこれまで。全てのジョニ黒に感謝を込めて…
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ジョニーウォーカー・ブラックラベル
1970年代流通
JOHHNIE WALKER BLACK 1970’s
香り/Nosing
こってり小麦の燻製・ベリーソースで
若干椎茸のようなミーティな小麦とスモーク
ベリー、小麦、そしてベリー、硫黄
一滴加水/Add Water
レーズン、オレンジ、蜂蜜
味わい/Tasting
刈り取りたての小麦の燻製・蜂蜜をかけて
スモーキーなこってり小麦に蜂蜜の甘味
麦芽味が目立ち、長く長く続く
若干のアルコール感も感じ、生きた酒を飲んでいる感じに。うまい。
同量加水/Twice up
・香・
濃厚小麦とさくらんぼ
・味・
香り通りの味わい
スッキリ。微かにミルキーなバニラ
ジョニーウォーカー・ブラックラベル
1980年代流通
JOHHNIE WALKER BLACK 1980’s
香り/Nosing
蜂蜜のボトルに漬け込んだ早摘み小麦
スッキリした小麦、蜂蜜
ベリー、スモーキー、軽くミーティ
一滴加水/Add Water
小麦粉、蜂蜜、セメダイン
味わい/Tasting
粗挽き小麦と蜂蜜のマリアージュ
しっかりした小麦粉と蜂蜜
スモーキー、バランス良
同量加水/Twice up
・香・
小麦、さくらんぼ
・味・
さくらんぼ、微かなタンニン、ミルキーなバニラ
ジョニーウォーカー・ブラックラベル
1990年代流通
JOHHNIE WALKER BLACK 1990’s
香り/Nosing
ミーティさは更に軽くなる。80sより増す、煙と小麦
蜂蜜、セメダイン
一滴加水/Add Water
蜂蜜
味わい/Tasting
滑らか。少しの刺激。蜂蜜。ベリー
スモーキーな膨らみ。オレンジ、蜂蜜
スモーキーな奥から甘味が湧き出してくる
ごく僅かな肉感が厚みを生み美味しく膨らむ
同量加水/Twice up
・香・
蜂蜜さくらんぼ
・味・
さくらんぼ、林檎、ミルキーなバニラの膨らみ、スモークの膨らみ。
ジョニーウォーカー・ブラックラベル
2000年代流通
JOHHNIE WALKER BLACK 2000’s
香り/Nosing
プラスチック製の卵白、腐った卵
生臭い。香りが最も軽い。
軽いプラ感、エタノール感だけが残る。
奥に蜂蜜は感じるが…
一滴加水/Add Water
スッキリ
蜂蜜、スモーキーオレンジ、レーズン
味わい/Tasting
溶けたプラスチックに混ざった蜂蜜
口当たりはスッキリ滑らか
蜂蜜と煙がプラスチック的な味わいと混じりたとえ難い味わいに
林檎、オレンジ
同量加水/Twice up
・香・
蜂蜜、プラスチック
・味・
プラ感。スモーキーさも立ち、スッキリとしたバランス感。最も香りが軽やか。
ジョニ黒オールドボトル|評価・レビュー
うーん、00年代の状態が酷かったですね。これだけはガチャ失敗かな。
70年代の状態は悪くありませんでした。ボディもまだ感じられます。ミーティな硫黄さえ気にならなければ濃い味のウイスキーとして楽しめるかもしれません。小麦の余韻も長く続きグッドです。
最も強く香りを放っていたのは80年代でした。ベリーや煙、ミーティな要素は70年代より軽いです。スモーキーさや味わいも90年代より軽くなっていましたが、良いバランスの範疇です。
90年代のジョニ黒は今回の当たりボトルです。湧き出る蜂蜜の甘みがたまりません。余韻も長く良い感じです。
80年代流通のボトル裏。「特級」の文字が時代を感じさせます
90年代流通のボトルと言えばDCLがギネス社に買収された数年後に販売されたボトルです。
この頃のボトルなら、まだDCL時代の魂を感じ取れるかもしれません。(ウォーカー家自体はWW2以前に撤退していますが、キーモルトであるカードゥ蒸溜所の秘蔵っ子がDCLの会長となった為、なんとか魂は繋ぎ止められていた…と信じたい)
買収を重ねるほどに創業者のスピリットは薄れてしまうもの。数年前のジョニーウォーカーの始まりの地とも言えるキルマーノック工場の解体が決定された事件は、それを象徴するような出来事でした。
2000年代流通のジョニ黒の注ぎ口。まさかの形状に驚きますが、これは大陸で流通していたボトルだからでしょう
オールドボトルを正しく評価するのは難しい。前回の飲み比べでは80年代のボトルが最も美味しく感じましたが、今回はやや違う結果となりました。
全てが健康的なボトルだったら…と思ってしまいますが、それは無い物ねだりと言うものです。せめて自分の持っているボトルは丁寧に保管しようと思います。
前回のオールドジョニー・テイスティングの記事はこちら
オールドボトルには現行品には無い魅力が詰まっています。濃ゆい煙と小麦、強いスパイス。各種フルーツが濃く出るものも。たまりません。
しかし当たりが出るかは運次第。ジョニ黒ガチャは一本約5千円からと挑戦しやすくなっております。興味のある方は是非チャレンジしてみて下さい。
それではまた。